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真夏のナイトツーリング

Posted by on 2012/08/26
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今日のルート



八月某日夏休み。天気晴れ。僕らは真夏のツーリングへと出かけた。出かけると決めたはいいが、その日は猛暑日の真っ只中。だから冷を求めて出石へそばを食べに行くことにした。そして夕方涼しくなるであろう頃を見計らって峠道を走ることにしたのであった。

出石へ

午前7時前。既に気温は高く30度は超えていたと思う。そんな暑い中僕らは自転車のペダルを漕ぎ出した。あまり頑張りすぎるとパッタリ倒れそうで、僕らはほどほどのペースで進んだ。

「最近、日本海側の方が気温高いらしいよ」

その日僕らが向かう豊岡付近の予想最高気温は37度、もしかしたら日本で一番暑いかもしれないところだった。実際、上り坂にさしかかるたびに滅茶苦茶暑かった。最初の坂から、

「私、今日は無理かも」

とM女史は弱音を吐いていた。ボトルの水をかぶりながら走ると少し気持ちよかったが、そんなのはつかの間で、あっという間に乾いてしまうのであった。少し雨でも降ってくれた方が涼しいのに。しかし、太陽はそれはもうギラギラと照りつけるのであった。全く、冷を求めるっていっておきながら、何なんだこの暑さは!聞いてないよと思いながら走った。
だいたい出石に行くだけならもっと緩い道もあるはずなのに、僕らの選んだ道はほとんど平坦路はなかった。このルートは昔M女子がK氏と共に出石に向かったことがある道で、それ以来出石に向かう定番の道となったようである。だからってわざわざこんな暑い日に走るなんて。M女史は峠のキツさなんて全く覚えてないようで、

「学習能力ないなあ?」

というK氏の声が聞こえてきそうであった。
日陰も何もない峠道、道の傍でおっちゃんが座り込んでいるのを見た。

「何かおっちゃんがへたりこんでなかった?」

M女史が言った。その人は警備員ぽい服を着ているようであったが、既に何を警備するわけでもなく、ただただ暑さに耐え忍んでいるだけの様に見え、まさに過酷だった。この先少し頑張って峠を超えたら、下り坂で少し涼める僕らの方がマシかもしれない。
出石へと続く最後の峠はちょっときついが、木陰があるだけ幾分かは涼しいところだった。なによりこれさえ越えれば冷たいそばを食べられると思うと、ちょっとやる気が出てきた。

「よっしゃー、峠や」

と思うと、騙されるのが峠道。案の定その道はもう一度登り返し、やっと本当の峠にたどり着いた。

「パン屋の看板があるところが本当の峠やで」

そうだったっけ?以前にもこの峠には来たことがあったが、僕はそんな看板のことなど全く覚えていなかった。学習能力がないのは僕も一緒のようだ。
そんな峠を超え一気に下ると、すぐそこは出石、そばの町であった。やっとたどり着いた、そんな感じだった。

出石そば

出石ではいつもお邪魔していたそば屋がなぜか見つからず、僕はあたふたとしていた。結局、新たに見つけたそば屋のまえでキョロキョロとしていると、中からそば屋のご主人が現れた。

「いらっしゃい。もうお客さんはいないから、自転車は中に入れて。さあさあ」

という感じで、愛想良く出迎えてくれた。それではと、僕らはその言葉に甘えさせてもらった。最初に差し出された水は、二人とも一気に飲みほしてしまった。

「遠くからよう来たなあ」

どこから来たのか話すと、ご主人も店のおばちゃんもとても感心した様子だった。
僕らはそばを注文して食べた。ふたりで20皿。ちょっと少なめかもしれない。

「また、来てくださいね」

と見送られて、僕らはそば屋をあとにした。夕方になりつつあったが、外は少しは涼しくなっているだろうか?

峠へ

残念ながらそば屋を出たあとも、まだしばらくは暑かった。ただ、峠にさしかかるまではしばらくは平坦な道が続いたので随分とマシであった。
峠への登り口の手前、僕らは補給のためスーパーに立ち寄った。ここを逃すとしばらく店は無いかもしれないのだ。
二人とも氷を買ってそれを膝の上に置きながら僕らはスーパーで買ったアイスを食べた。バックに入れていたバナナも食べた。氷はボトルに入れたが果たしていつまでもつのだろうか?
夕方6時前ぐらいになり、日が傾いてくるとかなり涼しくなってきた。周りが山に囲まれたその辺りはかなりの部分が日陰になっていた。お陰でスーパーを出てすぐの峠は昼間とはうって変わってとても涼しかった。
峠のトンネルを抜けて下りに入ると少し肌寒いぐらいだった。そして下りきったころにはもう辺りは真っ暗になっていた。

R429

いよいよ今回のツーリングの本番、真夜中の峠ツーリングが始まる。と、その前に、僕らは何もないと思っていた道の脇に小さな商店があるのを見つけ立ち寄った。しかし、あまりめぼしいものはなかった。りんごがあったがあまり新鮮そうではなかった。僕は食べれそうな物がないと半ばあきらめていたところ、M女史はうれしそうに、何かをぶんぶんふりまわしていた。それはちくわだった。ちくわねー…。僕も妥協気味にちくわを買った。妥協なのになぜか二本も。

「こんな時間からどこ行くのかね?」

と店のおばちゃんに聞かれ、R429の方だと言うと、何言ってんだこの人は?という顔をした様な気がした。確かにこんな夜中に峠に向かう自転車は普通ではないかもしれない。
店の外でちくわを食べながらライトの準備などしていると、今度は店のご主人がやってきた。

「これ、持って行き」

そう言って、ペットボトルの水を二本差し出してくれた。それはあまりにも自然で何気なく手渡された。こんなところにこんな優しい人がいるなんて。思いがけなくて本当に嬉しかった。
僕らは峠へと走り出した。最初は広かった道も段々と狭くなってきた。R429最初の峠。この峠が今回一番きつかった。何がきついって、この峠道はほとんどくねくねと曲がることがないのだ。山の斜面に対してまっすぐ登っていくので、その分かなりの激坂だった。早々にギアの足りてない僕はヘロヘロだった。かと言って足を着きたいというわけではなく、そのギリギリのラインの苦痛を味わいながら僕は登っていった。そんな坂をM女史はするすると登っていくように見えた。まっすぐな坂の先に彼女のテールライトがいつまでも見えた。
不意にパッと視界が開けた。そこから山の下の方が見え、空には丸い月が綺麗に浮かんでいた。その月のお陰で真っ暗なはずの林道は少しばかり明るかった。峠も頂上が近いのかだいぶ坂も緩くなってきた。

「どうかこのまま」

と思っていたがこの峠最後の最後までキツキツだった。

「早くー!怖いやんか!!」

一人で何もない頂上に待たされ坊主のM女史は、少しご立腹だった。というか、本当に怖かったようだ。何か出たんだろうか?



高野峠頂上、細くて長い峠を制覇。ここから波賀町

夜中の峠で出るものといえば、それは鹿などの動物だ。その峠の下りは鹿のオンパレードだった。らしい。
らしいというのも、前の方で叫びながら先に下っていったM女史のお陰で鹿は蹴散らされ、僕はほとんど遭遇することがなかったのである。僕は遠くに鹿の声を聞きながら下っていった。

「いっぱい出たよ。顔もいっぱい並んでたし、叫んだら川にハマった鹿もいたよ」

可哀想に、川に落ちた鹿もいたようだ。
それにしても道の細い峠だった。本当に国道かと思う細さで、さすが400番台の国道という感じだった。それに、昼間とはうってかわって峠の下りは少し寒いぐらいだった。登りでかいた汗は完全に冷えてしまっていた。


R429はまだ続く

更に僕らは次のR429へと向かった。向かったはいいが、さっきの峠で僕は体力を使い果たしていた。仕方なく少し休憩、僕はバッグの中に何か無いか探した。

「お、おにぎりだ!」

買っていたのを忘れていたが、これはラッキーと僕はおにぎりを頬張った。
そうしている間にM女史は先の方に行ってしまった。僕はあとを追いかけた。どこまで登るのかな?と思っていたら、峠には最近作られたと思われるトンネルが開通していた。
それは助かったが、ちょっと拍子抜けでもあった。本来の峠はまだくねくねと登っているはずで、また面白い峠が一つ無くなったことを意味していた。
トンネルは広くて出口まで登りで1.5kmほどあり、なかなか先は見えなかった。トンネルの向こうから何か声がした。それは甲高い声で何を言っているかわからない。M女史が何か叫んでいるようだ。僕はときおり「おー」とだけ言っておいた。
M女史は待たされてギャーギャー言っていた。もっとちくわを買っておけばよかったと後悔した。
今度の下りは僕が先に下る。鹿を蹴散らす係りだ。ときおり道端がガサッというたび、「ヒヨオォー」と声を出して走った。

最後の429


昼間は35℃を越えてたのに、今は19℃。寒いぐらい

さっきの峠がトンネルで終わったので、更に僕らは429を突き進んだ。今度の峠は、道もそれほど細くはなく、キツさも普通に感じた。というか、最初の429がキツすぎて、あれに比べたら随分マシとしか感じなかった。頂上にもすぐにたどりついた。そこも月明かりに照らされていた。


最後の峠は千種町

峠からの下りはだらーっと長かった。下りきったところは佐用のあたりでだいぶ西の方までやってきた。429はまだまだ続いているようだが、今回はこのあたりで引き返すことにした。明日も昼間は灼熱の予報だった。僕らは暑くなるまでに帰りたかったのだ。
途中、道の駅を見つけ少し休憩して、僕らは帰路についた。429きつかったなあとか話しながら僕らは走った。
突如、パトカーが僕らの後ろについた。

「そこの自転車ちょっと止まりなさい」

あーこんな時間に走ってるから職務質問だなと思い、僕らは自転車を止めた。
今日は出石に行って、その帰りなんだという話をすると、ちょっと驚いた感じだった。

「この先も気をつけてな。小動物や鹿がいっぱい出るから」

いや、既にいっぱい見ましたが?と思いながら、気にかけてくれたことにお礼を言っておいた。
その後も道の脇ではガサゴソと鹿が飛びたしそうな雰囲気がそこらじゅう漂っていた。
そして、ついにガッサーという音と共にそいつは道路に飛び出した。
ズドドドド!

「い?イノシシや!」

鹿ではなかった。山の主だった。そいつは人の家の垣根をズドドドドと登り走り去っていった。

「小動物ちゃうやんけ!」

かなりの大きさだった。ホンの少しのタイミングで真横から体当たりされていたかもしれないと思うと、僕らはゾッとした。
M女史は結構動揺していた。あんな大人のイノシシが民家のあるような人里まで降りてくるとは思っていなかったのだ。僕も小さいウリボーは見たことがあったが、大人のイノシシをあんな近くで見たのは初めてだった。
僕たちは、少し落ちつこうとすぐ先にあったコンビニに立ち寄った。

「大きかったな」
「ほんま、びびりまくりやわ」

そんなことを話していると、少し落ち着いてきた。それにしても、こんなところにまでイノシシがでるなんて、山にはもう餌がないのかな?イノシシも好きでこんな民家の周りを走っているわけでは無いのだろうと思うと、少しかわいそうに思った。

帰路


ここはテクノ中央

まだ車の動きださない暗いうちに、僕らは姫路の街中を通りすぎた。空はだいぶ明るくなってきた。既に気温は上がりつつあったが、まだそんなにあつくならないうちにゴールできそうだった。僕らは少し汗ばむのを感じながらゴール目指して走った。

「アイス食べたいー」

最後はそんなことを言って走った。そんなこんなで走り終え食べたのはそう!ガリガリ君だった。本当にうまかった。
それにしてもほんとに暑い一日だった。昼間は倒れるかと思ったけど、やはり夏はナイトランが涼しくていいなと思った。たまーに動物が出てびっくりするけどね。


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